三鷹(みたか)
三鷹駅は三鷹市の北の端にあり、市域は駅の南に広がる。公園や大学、研究機関などの一部として緑も多い。そのような地域に、荒川修作とマドリン・ギンズによる「三鷹天命反転住宅」は建てられている。交通量の多い東八道路沿いでカラフルかつ異様な存在感を放つため、通りがけに見た人もいるだろう。
市内には、横山操高松次郎などの画家、アーティストもアトリエを構えていたようだ。グラフィックデザインと親和性の高い両者だが、横山はポスターやネオンサインのデザイナーをつとめ、高松もプロダクトデザイナーとしてのキャリアを持っている。かつて銀座のシンボルでもあった地球儀型の「森永地球儀ネオン」は、横山が手掛けたものであるという。横山と亀倉雄策は5歳違いで、新潟県燕市(旧・吉田町)の同郷。生まれで作風が決定されるとは思わないが、お国柄というものを考えずにはいられない。なお、亀倉が幼少期をすごしたのは武蔵野市で、三鷹との市境付近である。
南口駅前のビルには市営の小さな美術館(大きなギャラリー)があり、こぢんまりとしながらも、そうした三鷹ゆかりの作家に関する魅力的な展覧会を行なっている。ファインアートだけではなく、この地を住まいとする杉浦茂諸星大二郎ら漫画家を取り上げた企画も多い。
三鷹の文化的な柱となるダークヒーローが太宰治で、住居跡から墓まで市内にある。作品にまつわる地も多く、前述の美術館では太宰に関連した展示もたびたび行われている。
太宰の入水した玉川上水に沿って東へ向かうと、ジブリ美術館へ到着する。吉祥寺からも同じくらいの距離だが、三鷹市営であるためか三鷹駅からのアクセスが推奨されているようだ。武蔵野の雑木林を象徴する井の頭公園へ溶け込むように、美術館はつくられている。井の頭池は神田川の水源であるので、市ケ谷〜飯田橋〜神田の印刷・製本文化の源流とも呼べるかもしれない。
アニメ制作会社も多く、エヴァンゲリオンで知られたガイナックスもかつては三鷹にあった。三鷹駅北口を出るとすぐに武蔵野市であるが、プロダクションI.Gなども本社を構えている。なお、現在プロダクションI.Gが入る建物は、かつて美術予備校であったという……。
2021年11月6日公開。『ベータ版』で尻切れになっていた大部分を追記し公開した。
いずれ、杉浦茂、諸星大二郎について書き加えたいと考えている。
2022年7月28日 誤字などを修正。