国立(くにたち)
「国分寺」と「立川」に挟まれているため、両者の頭文字をとって「国立」となった。駅近くにある「国立音楽大学」は、私立の「くにたちおんがくだいがく」である。また「新宿美術学院 国立校」という込み入った名前の美術予備校も存在する。学園都市、文教地区であるため古本屋や小さなギャラリーも多い。
国立はその瀟洒なイメージから一部サブカル者に嫌われるむきもあったようだが、けして中央線的な文化とも無関係ではない。多摩のジャンクソウルフード「すた丼」もこの国立発祥である。忌野清志郎永積タカシの故郷(両者の育ちは国分寺市だが国立駅に近い)であり、RCサクセションの曲『多摩蘭坂は「たまらん坂」としてこの地に実在する。一方『国立市中区3-1について、「中区」は存在しないものの「中」という地名はあるようだ。現実の「中3-1」は駅の南を大学通りに沿って進んだ一画で、現在の桐朋学園たり。清志郎やCHABO(仲井戸麗市)も出入りしていたという「ぶどう園(現キウイ園)」からすぐ近い。
「ぶどう園」とは、東大の研究農園でもあった、ぶどう畑の周りに建てられたアパート/長屋群のことで、こだま和文をはじめ多くのミュージシャンが暮らしていたそうだ。住人であった遠藤ミチロウイヌイジュンもここで出会う。つまり新種のバンド、ザ・スターリンはこのぶどう園で受粉し誕生した。
桐朋高校の卒業生を見ると仲井戸麗市の他、絵本作家の五味太郎、安西水丸の名付け親ともいえる嵐山光三郎、『聚珍録』で知られる府川充男、元博報堂の黒須美彦、そして大貫卓也などデザイナーにとって馴染み深い名も多い。国立には佐野研二郎のお気に入りとされる喫茶店ロージナなどもあり、多摩美〜博報堂勢にも因縁深い街とされる(?)。
桐朋のはす向かいにある都立国立高校(とりつくにたちこうこう)は、アンリアレイジの森永邦彦などを輩出した。国立高校まで南下するとむしろ「谷保駅」に近い。国立は近代になって開発されたため、かつては甲州街道に面した谷保の方が栄えていただろう。現在では、国立駅前に比べて随分のどかな景色が広がっている。
2021年11月14日公開。『ベータ版』のテキストを推敲し公開した
2022年8月10日 表現を若干修正